甲府地方裁判所 昭和27年(レ)16号 判決
控訴人等は主文と同趣旨の判決を求め、被控訴人等は控訴棄却の判決を求めた。
被控訴人等及び控訴人篠原の事実上の陳述は、原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。
控訴人志村は適式の呼出を受けながら第一、二審を通して本件口頭弁論期日に出頭せず、陳述したものと看做された控訴状の要旨は、控訴人篠原と同旨の本案前の抗弁を主張するというにある。控訴人志村はそのほか本案につき答弁書その他の準備書面を提出しなかつた。
<立証省略>
三、理 由
先ず本案前の抗弁について考えるとおよそ無尽講において講の掛金、掛戻金は何人から何人に対して請求し得べきかについては一に無尽講契約の約旨によつて定まるものと謂うべきであるが、組合類似の無名契約たる性質を帯びる講にあつては業務執行者の定めがある限り掛金、掛戻金の請求のような業務と雖も特段の事情がない限り業務執行者の権限に専属するものと解すべきところこれを本件についてみると、訴外土橋慶福が発起人となり一口の掛金額五千円、総口数十八口の親子総割制による無尽講を設立し昭和二十四年二月一日を第一回として爾後逐次講会を開催し入札の方法で講金受領者を定めたことは控訴人篠原の認めて争わないところであり控訴人志村においては明らかにこれを争わないから自白したものと看做すべきであり、当審証人水上高吉の証言により真正に成立したと認める甲第一号証および同第二号証の二、原審および当審の証人水上高吉、同土橋慶福の各証言(いずれも原審における証言については後記信用しない部分を除く)を綜合して考えると、右無尽講は訴外土橋慶福の訴外亡水上秀造に対する取引上の負債約十万円を償却することに出発したが結局講員相互間の資金の融通をなすことを目的として設立されたもので、会長、施主を定め会長は責任を以てその業務を処理し施主は会長の補助者として掛金、掛戻金の徴収落札金の交付講会の招集、準備等の事務に従事したことを肯認するに十分である。もつとも以上の証拠によれば、一講員たる被控訴人保坂が昭和二十七年二月二十七日、他の講員たる控訴人篠原に対し掛戻金の請求をしたことも窺われるけれども証人水上高吉の証言によればそのばあいにも会長の指図をうけて取立に赴いたに過ぎないことも認めることができるから掛戻金の請求等が講員各自の専行し得るところであつたことの証左とはなし難い。原審証人水上高吉、同土橋慶福の各証言中、前記認定に反する部分は信用しない。
してみると、本件無尽講は資金の融通を目的とする組合類似の無名契約であつて、会長は講員の委任を受け講金の取立等一切の講務を処理執行する権限を付与された者と謂うべきであるから、会長は掛戻金の請求についても裁判外はもとより裁判上においても自己の名においてこれをなし得るとともにこのような権限は専ら会長に属し、講員各自はこれをなし得ないものと解すべきである。
したがつて一講員たる被控訴人等は他の講員たる控訴人等を相手取り直接掛戻金の請求をするについて正当な当事者であるということができないから本案の当否を判断するまでもなく被控訴人等の本訴請求は失当として棄却を免れない。しかるに被控訴人等に当事者適格を認めたうえその請求を認容した原判決は不当であるから、原判決を取消して被控訴人等の請求を棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 川喜多正時 駒田駿太郎 青山達)